京急の駅名「金沢八景」とは? 歌川広重が描いた浮世絵の舞台を探せ! - tabico

京急の駅名「金沢八景」とは? 歌川広重が描いた浮世絵の舞台を探せ!

18 view更新日:2018年02月13日 情報提供:マイナビニュース

●気分は間違い探し!? 金沢八景を1日で巡る
「快特」も停車する京急電鉄の主要駅「金沢八景駅」。普段、何気なく目にし、耳にする駅名だが、その名前の由来を知る人は意外に少ないのではないか。金沢八景とは、この付近の平潟湾周辺の優れた風景、8カ所を選んだもので、江戸時代には、歌川広重の浮世絵などで広く知られるようになり、関東地方を代表する景勝地として、多くの物見遊山客が訪れた。

そこで今回、横浜市金沢区で名所等の案内役として活動している「横濱金澤シティガイド協会」のガイドさんに案内してもらいながら、金沢八景を巡ってみることにした。あわせて、冬限定の景色や、金沢八景巡りにぴったりなお土産も紹介しよう。

そもそもなぜ「金沢八景」なのか

金沢八景のように、美しい景色8カ所を選んで"八景"として数えるのは、日本各地で見られる。その元祖は、古くから山水画などの題材にされ、風光明媚な地として知られる中国湖南省の洞庭湖(どうていこ)周辺の八景を選んだ「瀟湘(しょうしょう)八景」だ。日本では金沢八景のほか、琵琶湖周辺の景勝を選んだ「近江(おうみ)八景」も、広く知られている。

ちなみに金沢八景とは、洲崎晴嵐(すさき の せいらん)、瀬戸秋月(せと の しゅうげつ)、小泉夜雨(こずみ の やう)、乙艫帰帆(おっとも の きはん)、称名晩鐘(しょうみょう の ばんしょう)、平潟落雁(ひらがた の らくがん)、野島夕照(のじま の せきしょう)、内川暮雪(うちかわ の ぼせつ)の8カ所を指す。

金沢周辺の景色が素晴らしいことは古来より知られていたというが、「金沢八景」を命名したのは、"水戸黄門"として知られる徳川光圀が水戸祇園寺の開山として招いた、中国からの渡来僧である心越禅師(1639~1696)だ。心越禅師が、高台に建つ能見堂(現在の「能見堂緑地」にかつてあった寺院)からの景色を、故郷・中国の瀟湘(しょうしょう)八景になぞらえて漢詩に詠んだのが、金沢八景の始まりとされる。

金沢八景が、世間により広く知られるようになったのは、江戸城本丸御殿や西の丸御殿の襖(ふすま)絵に、富士山や鎌倉・江の島など他の名所とともに金沢の景色が描かれたことや、歌川広重(1797~1858)をはじめとする多くの絵師や文人墨客によって「景勝地・金沢八景」として紹介されたことが大きい。

そこで今回は、広重の浮世絵とほぼ同じアングルで景色が見られるポイントを探しながら、八景を巡ってみようと思う。ただし、江戸時代中期以降、継続的に行われた平潟湾の干拓や、明治時代の追浜(おっぱま)飛行場の建設などで、周辺の景観はかなり変化してしまっているので、浮世絵に描かれたのと全く同じ景色を探すのは困難だという。手掛かりとなるのは、今も昔とほぼ変わらぬ姿を残す、平潟湾に浮かぶ「野島」くらいだろうか。

江戸と明治の歴史をたどる

さて、京急の金沢八景駅改札を出ると、現在、国道16号線の先にあり、乗り換えが不便な「金沢シーサイドライン」の金沢八景駅を京急の駅のすぐ近くに移動させる大がかりな工事が行われている。

国道16号を左折し、瀬戸神社の先の歩道橋を渡り、分岐を右に入っていくと、「瀬戸橋」という小さな橋が架かっている。橋の下流は平潟湾、上流は宮川という川になっているが、その昔、干拓が行われる前は、上流側にも内海(内川入江)が広がっており、現在の金沢文庫駅付近や能見堂跡の丘陵のすぐ下までが海だったという。外海に直接つながる南側の平潟湾と、北側の内海をつなぐ狭い部分に架かっていたのが瀬戸橋だ。"瀬戸"とは、元々、幅の狭い海峡のことをいう。

橋を渡った少し先に、「明治憲法起草の地」を示す案内板がある。ここには、かつて「東屋(あづまや)」という料亭があり、明治20(1887)年6月から伊藤博文や井上毅(こわし)らが集まり、憲法草案の構想を練ったのだという。昭和10(1935)年には、「憲法草創之処」という記念碑が東屋の敷地に立てられたが、料亭廃業後に40mほど離れた場所に移動された。

さて、この記念碑からもう少し東に歩を進めると、今も"洲崎町"という地名が残っており、この付近が金沢八景のひとつ『洲崎晴嵐』の地だ。浮世絵には砂州の上に無数の塩焼き小屋が描かれているが、かつては、この辺りでは海水を煮て塩をつくる"塩焼き"が行われ、明治38(1905)年に塩の製造が国有専売化されるまで続いた。現在はマンションなどが建ち並び、昔をしのぶ縁(よすが)もない。
○海辺のプロムナードを歩いて

来た道を瀬戸神社の前まで引き返そう。神社と国道を挟んで反対側に、形が楽器の琵琶に似ていることから「琵琶島」と呼ばれる弁財天をまつる島がある。

この島の先端まで歩を進め、海を眺めると、ちょうど『瀬戸秋月』に描かれたのと、同じような景色が楽しめる。浮世絵の右手前に書かれている建物は料亭の「東屋」であり、左奥の野島の手前に描かれている橋は瀬戸橋だというから、正確にはこの場所から描いたわけではないのだろうが、雰囲気を味わうのには申し分ない。広重の浮世絵はどれも風景を誇張して描いているから、もしかすると浮世絵通りの景色が見える場所など、最初から存在しないのかもしれない。

このまま湾に沿って歩き、シーサイドラインの金沢八景駅の下を通って先へ進もう。この道は、「平潟湾プロムナード」と呼ばれる海辺の気持ちのいい道だ。この道沿いに、『平潟落雁』『野島夕照』とほぼ同じアングルで景色が見られるポイントがあるので、探しながら歩けば楽しいだろう。

平潟湾プロムナードを600mほど歩くと、左手に野島公園に渡る「夕照橋(ゆうしょうはし)」が見えてくる。八景の『野島夕照』は、"夕照"を"せきしょう"と読むが、橋の名前は"ゆうしょう"と読む。ちなみに、夕照橋の手前から侍従(じじゅう)川に沿って800mほど川をさかのぼれば、その辺りが『内川暮雪』の舞台とされる場所だ。しかし、この付近は風景の変化が激しい上に、そもそも『内川暮雪』は別の場所であるという異説も多いため、先を急ぐならここは飛ばしてもかまわないだろう。

京都の宇治橋を模して造られ、「かながわの橋 100選」にも選ばれている夕照橋を渡り、その先の「野島町」の交差点を直進して住宅地の中を少し歩くと、右手に野島公園の入り口が見えてくる。公園内に設置されている地図に従い、展望台に上れば、そこには素晴らしい景色が待ち受けている。

●残り1カ所をじっくり巡るか、それとも夜のシーパラを味わうか
○素晴らしい展望台からの眺望

野島公園展望台からの眺望は、素晴らしいの一言に尽きる。東側を見れば、遠くには房総半島、眼下には日産自動車の追浜工場が広がっている。現在、工場内の自動車のテストコースになっている辺りに、かつて追浜飛行場の滑走路があったという。

南側には横須賀方面の景色が広がり、三浦半島の最高峰・大楠山(おおぐすやま 標高242m)なども見える。西側には鎌倉方面の景色が広がり、日によっては富士山も姿を現す。

金沢八景とのからみで重要なのは、北側の景色だ。シーサイドラインの線路が右にカーブする、その向こうの山の麓に見えるのが称名寺の屋根だ。『称名晩鐘』には、海に浮かぶ小舟の上で、子連れの母親が夕空に響き渡る称名寺の鐘の音に静かに手を合わせる様子が描かれている。広重の浮世絵では称名寺は山の中腹に建っているが、実際には山の麓にあることが分かる。

また、称名寺からやや右に目を移すと、「海の公園」の砂浜が広がっている。『乙艫帰帆』は、あの辺りの風景が描かれているのだそうだ。

このほか野島公園内には、明治期の海浜別荘建築である「旧伊藤博文金沢別邸」や、戦時中に戦闘機を空襲から守るために掘られた野島の掩体壕(えんたいごう) の遺構などがあるので、見学をオススメしたい。野島公園からシーサイドラインの野島公園駅までは、徒歩4~5分ほどだ。

さて、これで金沢八景のうち、7カ所を巡ったことになる。残るは雨の絵の名作である『小泉夜雨』だが、この絵の舞台となったのは、通説では金沢文庫駅から徒歩15分ほどの釜利谷の手子神社の付近とされる。

だが、この場所は他の7カ所から離れている上に、周辺の景観の変化が激しいので、もし時間に余裕があるなら訪れてみるくらいでいいだろう。むしろ、さきほど展望台から見えた称名寺の境内には美しい浄土式庭園があるので、こちらを訪れた方が、観光という意味では楽しいかもしれない。

金沢八景巡りは、現地の案内板や道標があまり充実していないので、ガイドさんと歩いて正解だった。ガイドは、参加人数が1~5人の場合は2,500円、6人以上の場合は、ひとりあたり500円追加でお願いできる。なお、予約はツアー実施日の1カ月くらい前までにしてほしいとのことだ。

●information
横濱金澤シティガイド協会
住所: 神奈川県横浜市金沢区瀬戸19-31-205
受付日: 火~土曜日10:00~16:00(ガイドの実施は日曜・月曜も可能)
○幻想的な夜のシーパラへ

昼間の散歩を楽しんだ後、夜は「横浜・八景島シーパラダイス」に移動しよう。シーパラダイスに最寄りのシーサイドライン八景島駅までは、野島公園駅から3駅5分ほどだ。シーパラダイスでは現在、夜を舞台にした幻想的な世界「SEAPARA NOCTURNAL ISLAND 2017-18」を開催している。

特に面白いと思ったのが、体験型イルミネーションだ。屋外に設置された"ポッド"の上に乗って身体を動かすことで、水族館アクアミュージアムの三角の大屋根に映し出されたプロジェクション映像のキャラクターが、動きに連動して反応するのを楽しめる。

アクアミュージアムの中に入ると待ち受けているのは、高さ8mの巨大空間に設置された、ストリングカーテンに映し出される360度3Dプロジェクションマッピング「水の大樹」。"生命の誕生の起源、生命の爆発"を表現したプログラムを楽しんだ後、ここから水族館内の生きものたちを眺めながら動線を進むと、イルカたちによるナイトショー「The Color of Love ~幸せを呼ぶイルカ~」の会場にたどり着く。

このナイトショーは2017年春から始まったもので、客席前面の大型LEDビジョンを中心に、壁面全体に映像が映し出され、多彩な光の中でイルカたちが物語を紡ぐ、見応えのあるものだ。生命や愛に関する様々なメッセージが込められており、ファミリーだけでなく、カップルや大人も楽しめる内容になっている。

●information
横浜・八景島シーパラダイス
住所: 神奈川県横浜市金沢区八景島
※「SEAPARA NOCTURNAL ISLAND 2017-18」は2月28日まで開催
○お土産には絶品スィートポテトを

金沢八景巡りのお土産は、金沢文庫駅から徒歩10分ほどの場所にある和菓子処「菊月」のスィートポテト「かねさわ一番ポテト」(税別180円)などはいかがだろうか。このお菓子は、「平成24年度 ガチでうまい横浜の商店街あまいものNO.1決定戦」で銅賞を獲得。しっとりとした舌触りと、サツマイモの上品な甘さが際立つ逸品だ。

さて、金沢八景周辺散歩はいかがだっただろうか。一年中いつ歩いても楽しめる散歩コースだが、展望台から富士山が眺められ、冬限定のイルミネーションも楽しめる、冬の間に一度訪れてみてはいかがだろうか。

※記事中の歌川広重の浮世絵の画像は、全て神奈川県立金沢文庫より借用

筆者プロフィール: 森川 孝郎(もりかわ たかお)

慶應義塾大学卒。IT企業に勤務し、政府系システムの開発等に携わった後、コラムニストに転身し、メディアへ旅行・観光、地域経済の動向などに関する記事を寄稿している。現在、大磯町観光協会理事、鎌倉ペンクラブ会員、温泉ソムリエ、オールアバウト公式国内旅行ガイド。2017年秋には、NHK『ごごナマ』に「紅葉」のゲスト講師として出演。鎌倉の観光情報は、自身で運営する「鎌倉紀行」で更新。

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