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まるでジェットコースター! 湘南モノレール沿線散歩で自然・グルメを求めて

36 view更新日:2017年09月12日 情報提供:マイナビニュース

●里山の自然が残る公園、モノレール車両基地・深沢の龍伝説
湘南モノレールという路線があるのをご存じだろうか。JR東海道線、横須賀線、根岸線などが乗り入れる大船駅と、江の島観光の玄関口である湘南江の島駅との間、6.6kmを結ぶ、珍しい「懸垂式(ぶら下がり式)」モノレールだ。

カーブや高低差の多い路線を最大75kmという高速で駆け抜けるため、「まるでジェットコースターみたい」とも言われる湘南モノレール沿線の散歩へ、同社の尾渡英生社長に話をうかがいながら、出かけてみた。

ICカードは2018年導入

大船駅のモノレール乗り場は、大船のシンボル・大船観音とは反対側、駅東口の2階コンコースにある。モノレール乗車時に少しとまどうかもしれないのが、「Suica(スイカ)」や「PASMO(パスモ)」などの交通系ICカードが使えないことだ。尾渡社長によれば、ICカードに関しては、「なんとか来年導入できるよう鋭意努力中」だという。

さて、券売機でその日のうちなら何度でも乗り降り可能な「1日フリーきっぷ」(600円)を購入し、車両に乗り込もう。湘南モノレールは、現在、7編成(1編成3両)の車両を保有しており、ボディーに引かれたラインカラーによって、それぞれ、"ブルーライン"、"レッドライン"、"ブラックライン"のように呼ばれている。

このうち、2016年5月にデビューした"ピンクライン"は、「ピンクリボン号」と名付けられ、ボディーに「ピンクリボン」がデザインされているなど、ほかの車両とちょっと違った印象だ。

このピンクリボンは、世界的な乳がん撲滅運動である「ピンクリボン活動」の象徴であり、2016年、投入する車両がピンクで計画されていたことから、ピンクリボン活動を応援しようと車内に乳がん検診のポスターなどを張り、「ピンクリボン号」として運行することになったのだという。

尾渡社長は、「湘南モノレール沿線には白百合学園もあり、多くの女学生が乗車している。ピンクリボン号に乗ったことを記憶にとどめ、将来、乳がん検診を受診してくれれば、という願いもある」と話す。

貴重な里山の自然が残る鎌倉中央公園

大船駅を出発したモノレールは、バスターミナルと大船の商店街を見下ろしながら、すぐに左にカーブし、次に大きく右にカーブする。いきなり、ジェットコースターのような乗り心地を体感できるのだ。

湘南モノレールは、一般の都心部を走る鉄道や高速道路と異なり、遮音壁がないため、高い位置からの車窓風景が存分に楽しめるのも特徴だ。街を行き交う人々や道路を走る車の様子を、まるで鳥になったような気分で眺めるうちに、ほどなく最初の駅である富士見町駅、続いて、その次の駅である湘南町屋駅に到着する。

湘南町屋駅で降りてみることにしよう。この駅から徒歩15分ほどのところには、尾渡社長が、モノレール沿線でイチオシのスポットだという「鎌倉中央公園」がある。駅改札を出て、道路を渡り、左手の坂道を上った先には閑静な住宅地が広がっており、その一角に公園入口がある。

鎌倉中央公園は、上池、下池という2つの池や、湿生花園、庭園植物園、疎林広場、さらに、近隣の小学生が田植え、稲刈りの体験を行う田んぼなどを含む、およそ23.7ha(23万7000平方メートル)にもおよぶ広大な風致公園だ。手つかずの状態に近い豊かな自然林の中で、ちょっとしたトレッキングも楽しめる散策路が整備されており、園内を一周するには、ゆうに1時間はかかる。

尾渡社長は、「鎌倉中央公園という名前からは想像がつかないが、今では大変貴重になった日本の里山がしっかりと保存されている。都心から電車で40分の大船駅でモノレールに乗り換えて数分のこの場所に、まるで信州の山間部にでも来たような景観が残されているのは、すごいことだと思う」と話す。

車両基地見学会でモノレールの仕組みを知る

再びモノレールに乗って、次の湘南深沢駅に移動しよう。駅の少し先で本線と分岐して、右手へカーブして行くレールが見えるが、この分岐線の先にあるのが、モノレールの車両基地だ。

この車両基地は普段は立ち入ることはできないが、年に数回、見学できる機会がある。それが、夏季(7月・8月)に「はとバス」が開催する、横浜と鎌倉の名所等を巡るツアーに組み込まれた見学会と、鎌倉市のふるさと納税の返礼品として、毎月開催される見学会だ。

先日、はとバスツアーの見学会の様子を取材してきたので、その様子を紹介しよう。見学会では、実際のモノレールの車両の運転室見学と、整備工場での車両構造についての説明が行われる。

運転室見学は、一家族ずつ、普段は立ち入ることのできない運転室に入り、運転士にレクチャーを受けながらレバーの操作等を行い、「運転士体験」ができる。また、整備工場では、2階で車両の下部、3階で屋根部分、そして、4階では、普段はモノレールのレールにあたる「軌道桁(ケタ)」内に収まっているため目にすることのないゴムタイヤやモーターなど、"台車"部分を見ることができる。

実は、このゴムタイヤはモノレールにとって、とても重要なのだ。湘南モノレールの最大傾斜角は、箱根登山鉄道より、ほんの数パーセント緩やかな程度であり、かなり急な角度を上り下りする。しかし、箱状の密閉空間になっている軌道桁の中をグリップのきくゴムタイヤで走行しているため、風雨雪など気候の影響を受けにくく、路面がスリップしないのだという。

つまり、懸垂式モノレールだからこそ、高低差がある路線でも、安全かつ高速な運行が可能なのだ。

深沢は五頭龍伝説の地

ところで、このモノレール車両基地のある深沢の地には、以下のような伝説がある。

"その昔、深沢の底なし沼に5つの頭を持つ悪龍「五頭龍(ごずりゅう)」が住んでいて、山崩れや洪水を起こして田畑を荒らし、村の子供を食らうなど、様々な災いをもたらし、民を苦しめていた。

ある時、五頭龍は江の島の天女に一目惚れし、結婚を申し込むが、それまでの行いをとがめられ、断られた龍は、天女と結婚するために改心した。その後、天女と結ばれた龍は、日照が続けば雨を降らせ、実りの秋には台風を跳ね返し、津波が来れば体当たりで防ぐなど必死に働き、やがて、力尽きて山になった"

この物語に出てくる江の島の天女とは、江の島島内の江島神社にまつられている弁天さまだが、夫である五頭龍をまつる神社もある。それが、湘南深沢の次の駅、西鎌倉駅からほど近い住宅地の中にある龍口明神社だ。

もともとはモノレールの終点である湘南江の島駅近くの龍口寺の隣にまつられていたが、その場所は藤沢市内にある鎌倉市の飛び地であり、氏子からの場所を遷したいという要望もあって、昭和53(1978)年に現在地に遷座された。

龍口明神社の現在の社殿がある場所は、鎌倉市"腰越(こしごえ)"という地名だが、一説には、五頭龍が村に出てきては子どもを食らったため、村人たちが泣く泣く住み慣れた土地を離れたことから、"子死越"と呼ばれるようになったという。

ちなみに、龍口明神社からも近い、「広町緑地」の森の奥には、「稚児桜」と名付けられた桜の大木がある。その名前の由来は、五頭龍が飲み込んだ津村(現在の鎌倉市津)の長者の、16人の子どもたちを供養する塚になぞらえたと言われている。

さて、西鎌倉駅に続いて片瀬山駅・目白山下駅に到着する。旅の〆には、老舗店のていねいなグルメたちなんていかがだろうか。続いてはそんな片瀬山やグルメを紹介しよう。

●変わる湘南江の島駅、旅の〆は黒毛和牛を鋤焼で
○現代の龍はモノレール?

さて、西鎌倉駅の次は片瀬山駅に到着する。この駅の付近は、モノレールが地上と同じ高さを走る珍しい区間だ。片瀬山の次の目白山下駅で、下車してみよう。目白山下駅のホームからは、相模湾が遥かに見渡せる。

駅を出たら、後を振り返るようにして、モノレールに沿って細道を上っていこう。この先の小高い山の頂上付近一帯は、「片瀬山公園」として整備されている。

この片瀬山、または目白山と呼ばれる山は、もともとは竜口山といい、この山こそが、力尽きた五頭龍が山に姿を変えたという、伝説の山なのだ。今となっては住宅の造成等で寸断されてしまったものの、かつては、この片瀬山から深沢方面に続く丘陵が、横たわる龍に見えたことから五頭龍伝説が生まれたのだろう。しかし、今はむしろ、空を駆け抜けるモノレールこそが、"現代に蘇った龍"に見えるのは、筆者だけだろうか。

片瀬山の見学を終えたなら、モノレールに乗って、終点の湘南江の島駅を目指そう。目白山下駅を出ると、間もなくトンネルに入り、トンネルを出るとすぐに、吸い込まれるように湘南江の島駅のホームに到着する。

湘南江の島駅は、現在、バリアフリー化のため、エレベーター、エスカレーターを設置する新棟の増築工事を行っており、新エレベーター棟の供用開始は、2018年4月1日を予定している。新棟の内観イメージを見れば、ずいぶんきれいな駅になるのだなと思う。

江の島は2020年東京五輪のセーリング競技の会場に予定されているなど、今後、江の島を訪れる人が増加することが見込まれるので、駅をリニューアルする意味は大きい。

散歩のシメは牛鋤焼と自家製お蕎麦で

さて、散歩のシメにおいしいものを食べに行こう。モノレールで大船まで戻り、向かったのは、「ルミネ ウィング」のレストラン街にある「らい亭(らいは「木雷」で1字)北院」という店だ。

同店は、鎌倉山にある蕎麦・会席料理の老舗「らい亭」の支店で、店名は、大船が鎌倉の北の玄関口に位置することから名付けたという。以前は老舗ということもあり、年配のお客さんが多かったが、食事メニューやお酒の種類を増やすなどした結果、様々な年齢層のお客さんが増えたという。

今回注文したのは、黒毛和牛の「牛鋤焼(ぎゅうすきやき)」を中心に、自家製蕎麦、茶碗蒸し、香の物などがついた「北院膳」(税別1,900円)。これからの、秋の行楽にピッタリなメニューだ。ちなみに、9月11日より、北院では全てのメニューで、これまでは有料だった蕎麦の大盛を無料にするサービスを開始するという。

なお、北院では毎月プレミアムフライデーに合わせて、「プレミアムフらいてー」というプレミアムなフライや天ぷらが食べられる企画を実施している。9月はなんと松茸の天ぷらが食べられるということで、こちらも楽しみだ。

さて、湘南モノレールの沿線散歩、いかがだっただろうか。湘南モノレールは、これまでどちらかというと沿線住民の通勤・通学の足と認知され、観光路線のイメージは薄かった。しかし近年、同じく江の島観光の足である江ノ電の混雑が激しいことが地域の社会問題にもなっていることなどから、観光路線としても注目されはじめていることもあり、様々なイベントの開催や、特別なヘッドマークを付けた列車の運行など、PRに力を入れている。

尾渡社長は、「湘南モノレールの全国的な知名度はまだまだだが、今後、広く存在を知ってもらい、観光客の皆さまに、江ノ電とモノレール、2つとも乗れたらいいよねと言っていただけるような存在に、早くなりたい」と意気込みを語る。

筆者プロフィール: 森川 孝郎(もりかわ たかお)

旅行コラムニスト、オールアバウト公式国内旅行ガイド。大磯町観光協会理事。鎌倉ペンクラブ会員。京都・奈良・鎌倉など歴史ある街を中心に取材・撮影を行い、「楽しいだけではなく上質な旅の情報」をメディアにて発信。観光庁が中心となって行っている外国人旅行者の訪日促進活動「ビジット・ジャパン・キャンペーン」の公式サイトにも寄稿している。鎌倉の観光情報は、自身で運営する「鎌倉紀行」で更新。

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